削除業者の選び方|契約前に確認する項目
削除を扱う事業者の説明は、ほとんどが同じ言葉で書かれている。差が出るのは弁護士法72条の線をどう扱っているか、成果をどう定義しているか、そして証憑を出すかの三点である。ここでは契約前に確認する項目を、条文と各サイトが公表している条件に当てて整理する。
ABSTRACT
判断の軸は三つに絞れる。第一に、請求行為そのものを代行すると説明していないか。弁護士法第72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことを禁じ、違反には2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められている。第二に、何をもって削除とするかが契約書に書かれているか。第三に、申出の受付番号と回答を証憑として出すか。この三点を満たさない契約は、結果を検証できない。
本文の条文・条件は、e-Gov 法令検索、総務省が公表する削除申出窓口の一覧、情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会、裁判所ウェブサイト、および各サイトの削除依頼ページの記載を、掲載日時点で確認したものである。
目次
01最初に確認する三点
問い合わせの段階で確認できることがある。ここで答えが曖昧な相手は、契約後も曖昧なままになる。
- 誰の名義で申出を出すのか。本人名義か、事業者名義か、弁護士名義かで、受け付けられるサイトが変わる。
- どの窓口に出すのか。サイト名と、そのサイトが公表している受付方法を具体的に挙げられるか。
- 何を証憑として渡すのか。受付番号、回答文、削除前後のスクリーンショットのどれが出るのか。
「独自のルートがある」「サイトに知り合いがいる」という説明は、公表された窓口と基準の存在を否定するものである。総務省は指定事業者の削除申出窓口と削除基準を一覧で公表しており、誰が出しても同じ窓口に入る。非公開の経路を前提にした説明は、確認する手段がない。
02弁護士法が引く線
弁護士法第72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解その他の法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることはできないと定める。第77条第3号は、違反した者を2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処するとしている。
この線は、サイト側も見ている。ホスラブは、削除請求の代理・代行を業として行うことは弁護士法72条の非弁行為に当たるとして、そのような請求には一切応じないと明示する。つまり、事業者名義で出した申出が、それだけで拒否されるサイトが実在する。
| 説明の文言 | 読み替えると | 確認すること |
|---|---|---|
| 弊社が削除請求を代行します | 法律事務に当たり得る | どの名義で、どのサイトに出すのか |
| サイトと交渉します | 交渉は弁護士の領域 | 交渉の相手と手段を具体的に聞く |
| 示談金の回収まで対応します | 権利の実行を業とすることに当たり得る | 弁護士法第73条の問題を確認する |
| 提携弁護士が対応します | 受任するのは弁護士 | 委任契約の相手が誰になるのか |
| 書式の作成と窓口の確認を支援します | 事務の支援 | 最終的に誰の名義で提出するのか |
03契約書で確認する条項
削除は、相手方の判断に左右される作業である。だからこそ、何を履行とするかが書かれていない契約は、後から争いになる。
| 条項 | 確認する点 |
|---|---|
| 業務の範囲 | 対象の URL が特定されているか。件数の上限があるか |
| 成果の定義 | 申出の提出までか、削除の実現までか |
| 期間 | 作業期間と、無償で対応する期間が分かれているか |
| 未処理分の扱い | 削除されなかった分の精算方法が書かれているか |
| 報告 | 報告の頻度と、受付番号を含むかどうか |
| 再発時の対応 | 同一内容の再投稿を対象に含むか |
| 資料の取扱い | 提供した画像・動画の保管期間と廃棄の時期 |
| 再委託 | 第三者に渡るのか、渡る場合の範囲 |
とくに成果の定義は、見積りの金額より先に確認する。削除の判断はサイト側が行うため、削除の実現を成果とする契約では、達成できなかった場合の精算方法まで書かれていなければ条項として機能しない。未処理分を件数で割って返す方式か、一定割合を下回った場合に限って返す方式かで、負担の分け方がまったく違う。
期間の書き方にも差が出る。削除の作業期間と、作業後に無償で対応する期間を分けていない契約は、再投稿が起きた時点で追加費用の話になる。再投稿は性質上必ず起きるため、同一内容の再投稿を対象に含めるかどうかは、最初に決めておく項目である。
04成果をどう検証するか
検証できる成果は、三つしかない。申出が受け付けられたこと、回答が来たこと、対象の URL が到達不能になったことである。
報告に含まれているべきもの
- 対象の URL 一覧。サイト名、スレッド名やレス番号まで入っているか。
- 申出を出した日付と、サイトが発行した受付番号。
- サイトからの回答文。却下された場合は、その理由。
- 削除前と削除後のスクリーンショット。切り取らずに全画面で。
- 未処理として残っている件数と、残っている理由。
- 次に何をするかの予定。再申請か、書式の送付か、裁判手続か。
指定事業者は、申出を受けた日から7日以内に判断の結果を通知する(情プラ法第25条、施行規則第16条)。したがって、指定事業者に出した案件について1か月後も回答の記載がない報告は、申出自体が出されていない可能性を確認する材料になる。なお、発信者の意見を聴くときや侵害情報調査専門員に調査させるときは、7日以内にその旨だけを知らせて延びる仕組みがある(第25条第2項)。この通知も報告に載っているべき書面である。
逆に、指定を受けていないサイトには期限がない。ホスラブは削除を96時間を目処とし、したらば掲示板は名誉毀損・プライバシー関係の精査に約2週間、爆サイ.com は発信者情報の開示までの目安を約1か月としている。相手ごとに時計の進み方が違うため、「1か月で全件」という一律の説明は、相手の条件を見ていないことを示している。
05本人確認と委任の実務
代理で申出を出す場合、サイトが要求する書類は本人が出すより多い。ここを用意できない事業者は、そのサイトに対して申出を出せない。
- 爆サイ.com。本人確認済または代理人確認済のアカウントでログインしてから申告する。代理人申請には本人の自筆・実印の委任状と3か月以内に発行された印鑑登録証明書が必要で、発信者情報の開示請求は有料、開示までの目安は約1か月とされている。
- したらば掲示板。名誉毀損・プライバシー関係は書面のみの受付で、精査に約2週間としている。
- ホスラブ。削除依頼フォームのみを受け付け、フォーム以外の依頼は受け付けないと明示する。削除は96時間を目処としている。
- Google 検索。本人または代理人がリクエストを開始できる。代理の場合は法的な代理権を証明できることが前提になる。
- StopNCII.org。ハッシュは本人の端末上で生成する仕組みで、登録そのものを第三者が代行できない。
ハッシュ登録のように、構造上本人しか実行できない作業がある。これを「弊社が登録します」と説明する相手は、仕組みを確認していないか、別のことをしている。契約前に、本人が行う作業と事業者が行う作業を分けて書き出してもらう。
06数字の読み方
削除率や対応件数は、母数と期間が書かれていなければ比較できない。見積りの数字は、次の点を確認して読む。
- 母数は申出件数か、対象 URL の件数か。同一ページの複数投稿を1件と数えるか。
- 期間はいつからいつまでか。累計か、月平均か。
- 削除の判定は誰が行ったか。サイトからの回答文があるか、画面上で見えなくなったことをもって削除としているか。
- 検索結果から消えたことを削除に含めていないか。Google が削除できるのは検索結果ページ上のコンテンツだけで、記録はサイトに残る。
- 再投稿された分を差し引いているか。
参考として、サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)が公表している自社の指標は、月平均削除52,142件以上、対応プラットフォーム914個以上、削除率98.2%である。この種の数字を見るときは、右の五点をそのまま当てて確認してほしい。自社の数字であっても、確認できない前提で読まれるべきものである。
もう一つ、数字より確認しやすい指標がある。情プラ法第28条により、指定事業者は申出の受付状況と対応状況を公表年度の経過後2か月以内に公表する。相手のサイトが年間に何件の申出を処理しているかが分かるため、督促の根拠として使える。この公表を見ているかどうかで、事業者の実務の深さはある程度判断できる。
07勧誘の型
契約を急がせる説明には、型がある。急がせる理由が事実かどうかを、その場で確認できる形にする。
| 勧誘 | 確認の仕方 |
|---|---|
| 今日契約しないと拡散が止まらない | 拡散の経路と現在の件数を、URL の一覧で示してもらう |
| サイトに独自の削除ルートがある | 総務省が公表している窓口と、どう違うのかを聞く |
| 必ず削除できる | 削除の判断主体はサイト側である。契約書の成果の定義を見る |
| 投稿者を特定して示談にできる | 特定は裁判手続で、交渉は弁護士の領域である |
| 検索から消えるので問題ない | 検索から消えても記録は残る。元のページの扱いを聞く |
| 全件ハッシュ登録して再投稿を防ぐ | ハッシュは本人の端末で生成する。誰が登録するのかを聞く |
08情報の扱い
削除を依頼する過程で、相手に渡る資料がある。性的な記録を含む案件では、ここが最も慎重に扱われるべき部分になる。
- 提供する資料の範囲を決める。対象の特定に必要な分だけで足りる場合が多い。
- 保管の期間と、作業完了後の廃棄の時期を契約書に書く。
- 再委託の有無を確認する。第三者に渡る場合は、同じ条件が及ぶかを確認する。
- 監視の方法を確認する。撮影物そのものを保持するのか、メタデータやハッシュ値だけで照合するのか。
- 連絡手段を決める。どの経路で報告が来るのかを最初に固定する。
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)の運用では、監視は撮影物そのものではなくメタデータとハッシュ値で行い、撮影物は削除してメタデータのみを記録する。利用約款には、作業完了時に個人情報を2週間後に完全破棄する条項を置いている。
09弁護士に移すべき場面
事務の代行では進まない領域がある。この段階に来たら、受任者を切り替えるか、並行して依頼する。
- 任意の申出を出し切って動かない相手がいる。削除仮処分の申立てが必要になる。
- 投稿者を特定して損害賠償を請求したい。発信者情報開示命令の申立てが必要になる。要件は情プラ法第5条の二つである。
- 相手方から反論が来ており、交渉になっている。
- 刑事告訴を考えている。名誉に対する罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を経過するとできない(刑事訴訟法第235条)。
東京地方裁判所民事第9部は、発信者情報開示命令事件では投稿記事の削除を求めることはできないと明示し、削除を求めるなら保全命令の申立て等によると説明している。特定と削除を一本の手続で済ませる説明には根拠がない。
10乗り換えるとき
途中で受任者を変える場合、引き継ぎの資料が揃っていないと作業が最初から戻る。変えると決めた時点で、次の資料を回収する。
- 対象 URL の一覧と、各件の受付番号。
- サイトからの回答文と却下理由。再申請では前提資料になる。
- 提出した書式の控えと、送付の記録。
- 削除済みの件と、未処理の件の区別。
- 提供した資料の廃棄を求める通知と、その回答。
既に受け付けられた申出の番号は、同一案件として扱われる手がかりになる。回収せずに乗り換えると、同じ投稿について新しい番号が立ち、サイト側が重複申出として処理を止めることがある。
引き継ぎで最も抜けやすいのが却下理由である。却下は、同じ文面を出し直しても同じ結果になる。何が足りないと判断されたのかが分からないまま新しい受任者が着手すると、一巡目と同じ申出を繰り返すことになる。回答文の原本を、画像ではなく文字で残してもらう。
資料の廃棄も、口頭の確認では残らない。廃棄を求める通知を書面で出し、回答を受け取ったうえで記録する。性的な記録を含む案件では、ここが最後の作業になる。
よくある質問
業者が代わりに削除請求してくれますか
請求行為そのものの代行は弁護士法第72条の問題になる。ホスラブのように、代理・代行による請求には一切応じないと明示するサイトもある。
必ず削除できると言われました
削除を判断するのはサイト側である。確認できるのは申出が受け付けられたことと回答の内容で、成果の定義が契約書に書かれているかを見る。
削除率の数字はどう見ればいいですか
母数と期間、判定の方法を確認する。検索結果から消えたことを削除に含めている場合、記録はサイトに残っている。
受付番号を出さない業者は問題ですか
検証の手がかりがなくなる。指定事業者なら申出から7日以内に判断の通知が来るため、回答の記載がない報告は確認する価値がある。
委任状や印鑑登録証明書は必要ですか
サイトによる。爆サイ.com は代理人申請に本人の自筆・実印の委任状と3か月以内に発行された印鑑登録証明書を求めている。
ハッシュ登録を代行してもらえますか
できない。StopNCII.orgはハッシュを本人の端末上で生成する仕組みで、画像や動画をアップロードしない。登録は本人が行う。
提供した画像はいつ消えますか
契約書で保管期間と廃棄の時期を定める。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)の約款では、作業完了時に個人情報を2週間後に完全破棄すると定めている。
途中で業者を変えても大丈夫ですか
変えられる。ただし対象 URL の一覧と受付番号、回答文を回収してからにする。回収せずに切り替えると作業が戻る。
確認した出典
- 弁護士法(第72条・第73条・第77条) - e-Gov 法令検索
- 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律 - e-Gov 法令検索
- 同法施行規則(第16条) - e-Gov 法令検索
- 刑事訴訟法(第235条) - e-Gov 法令検索
- 情プラ法第21条に基づき届け出られた削除申出窓口及び削除基準(一覧) - 総務省
- インターネット上の違法・有害情報に対する対応 - 総務省
- 情報流通プラットフォーム対処法 関連情報サイト - ガイドライン等検討協議会
- 削除申出・発信者情報開示の手続 - 爆サイ.com
- 削除依頼ガイド - ホストラブ
- 弁護士・法務関連、捜査関係のお問い合わせ - したらば掲示板
- 個人的な性的コンテンツの削除 - Google 検索ヘルプ
- ウェブサイトの所有者に連絡する - Google 検索ヘルプ
- StopNCII.org - SWGfL / Revenge Porn Helpline
- 発信者情報開示命令事件 - 東京地方裁判所民事第9部
本稿は一般的な情報であり、法的助言ではない。結論は個々の事実関係、相手方や裁判所の判断によって変わり、特定の結果を約束するものではない。プラットフォームの方針や法令上の義務は変わるため、記載は掲載日時点で確認した内容である。本文中のサービス名はそれぞれの権利者の商標であり、サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)はこれらと提携関係にない。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は法律事務を取り扱わないため、法的助言が必要な場合は弁護士に依頼すること。
CASE INTAKE
契約前に、工程と証憑を書面で確認する
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は、対象の記録と一覧の作成、各窓口の受付条件の確認、書式の下書き、受付番号と回答を含む報告、再投稿の監視という事務の部分を扱う。どの工程を誰が行うかは、契約前に工程単位で提示する。相談内容は外部に出さない。
すべての相談は匿名で行われます。