有料コンテンツを無断転載されたときの著作権対応
有料で配信した写真や動画が転載された場合、使える根拠は著作権である。プライバシーや名誉と違って権利の所在で決まるため、要件が明確で、海外のサイトにも通知の仕組みがある。ここでは請求権の条文、リーチサイトの規制、刑事の法定刑と告訴の扱い、プラットフォーム別の申し立て経路を整理する。
ABSTRACT
まず確認するのは、自分が著作権者であるかどうかである。自分で撮影し自分で編集した作品なら問題ないが、撮影者が別にいる、プラットフォームの規約で権利の一部を移している、共同で制作したといった事情があると、請求の主体が変わる。権利が確認できれば、著作権法第112条の差止請求、第114条の損害額の推定、第119条の罰則という三段が使える。リンクを集めて誘導するサイトについては、2020年の改正で導入されたリーチサイト規制が及ぶ。
本文の条文・法定刑・手続は、e-Gov 法令検索、YouTube ヘルプ、Google の公式ヘルプ、Telegram の FAQ、Cloudflare の濫用への対応方針および総務省が公表する削除申出窓口の一覧の記載を、掲載日時点で確認したものである。
目次
01最初に権利の所在を確認する
著作権の筋が強いのは、判断が権利の所在で決まるからである。逆に、権利の所在が曖昧なまま出した通知は、相手方から一点を突かれて全体の信用が落ちる。
通知を出す前に確認すること
- 撮影したのは誰か。自撮りなのか、撮影者が別にいるのか。
- 編集したのは誰か。編集に創作性があれば、その部分の権利が別に生じる。
- 配信したプラットフォームの規約で、権利の一部を移していないか。
- 共同で制作した場合、単独で請求できるのか。
- 使われている音源や素材に第三者の権利が含まれていないか。
- 元のファイルと、配信した日時の記録が残っているか。
- 転載先に付いている題名、説明文、ファイル名。監視語の元になる。
YouTube は、虚偽の情報を送信しないよう明記し、不正な書類を提出するなどして手続を不正に使用した場合はアカウントの停止や法的問題に発展する可能性があるとしている。権利の所在に疑いがある部分は、通知の対象から外す。
02著作権法の請求権
民事では、差止めと損害賠償の二本が立つ。条文の構造を押さえておくと、通知に何を書くべきかが決まる。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第112条第1項 | 著作者、著作権者、出版権者、実演家または著作隣接権者は、権利を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止または予防を請求できる |
| 第112条第2項 | 請求に際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物または専ら侵害の行為に供された機械もしくは器具の廃棄その他必要な措置を請求できる |
| 第114条第2項 | 侵害者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額を損害の額と推定する |
| 第114条第3項 | 権利の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を、自己が受けた損害の額として賠償を請求できる |
| 第113条第1項第2号 | 権利を侵害する行為によって作成された物を、情を知って頒布し、頒布の目的をもって所持し、もしくは頒布する旨の申出をする行為は、侵害行為とみなす |
第114条第3項が重要である。有料で配信していた作品なら、受けるべき金銭の額を基準に損害額を主張できる。無断転載により実際にいくら売れなかったかを立証しなくても、使用料相当額という形で組み立てられる。第114条第6項は、同項の金額を超える損害の賠償請求を妨げないとしている。
03リンクを集めるサイト
ファイルを置かず、他所に置かれたファイルへのリンクを集めて誘導するサイトがある。2020年の改正で導入された規定が、これを捉える。
第113条第2項は、送信元識別符号等の提供により侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為であって、同項第1号に掲げる侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において、または第2号に掲げるプログラムを用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知っていた場合、または知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、侵害行為とみなすと定める。
- 第1号イは、侵害する送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、強調されていることなどから、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものと認められるウェブサイト等を挙げる。
- 第1号ロは、提供されている侵害送信元識別符号等の数や割合、分類や整理の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられると認められるウェブサイト等を挙げる。
- 第113条第3項は、そのようなサイトの公衆への提示を行っている者が、侵害であることを知りながら防止措置を講じない行為も侵害とみなすと定める。
- 第119条第2項第4号は、侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行った者を5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科とする。
実務上の意味は、申し立ての宛先が増えることである。ファイルを置いているサイトだけでなく、リンク集に対しても根拠を立てられる。
04刑事の法定刑と告訴
刑事で動かす場合の条文を押さえておく。法定刑は重く、一定の場合には告訴が不要になる。
| 条文 | 行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第119条第1項 | 著作権、出版権または著作隣接権を侵害する | 10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科 |
| 第119条第2項第1号 | 著作者人格権または実演家人格権を侵害する | 5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科 |
| 第119条第2項第4号 | 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行う | 5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科 |
| 第119条第3項第1号 | 有償著作物等であることを知りながら、侵害する自動公衆送信を受信してデジタル方式の録音または録画を行う | 2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科 |
第123条第1項により、第119条第1項から第3項までの罪は告訴がなければ公訴を提起できない。ただし第123条第2項は、対価として財産上の利益を受ける目的、または有償著作物等の提供により著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的で、有償著作物等について原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、または原作のまま公衆送信を行うなどの場合の第119条第1項の罪には、告訴の規定を適用しないとする。有料配信した作品をそのまま転載する行為は、ここに当たり得る。
05プラットフォーム別の申し立て
著作権の通知は、どのサービスにも窓口がある。経路を間違えないことが先である。
| サービス | 経路 | 注意点 |
|---|---|---|
| YouTube | YouTube Studio のコンテンツ検出、またはメールで copyright@youtube.com | Studio から出すと再アップロード防止を選択できる |
| X | 日本向け報告フォーム | 情プラ法の指定事業者。削除基準はルールとポリシーで公表 |
| Instagram・Threads | Meta の窓口 | アプリ内の報告と二本立てで出す |
| TikTok | 著作権侵害の報告 | ユーザー生成コンテンツ内の侵害が対象。虚偽の申立ては webform の利用停止などの結果を招く |
| Telegram | dmca@telegram.org | 公開されているボット、チャンネル、ステッカーセット等が対象。非公開のグループとチャットは対象外 |
| 海外の配信サイト | ホスティング事業者の濫用窓口 | Cloudflare は著作権と商標について米国の通知と削除の手続に従うとする |
Telegram は、非公開のグループとチャットについては参加者間で私的なものであり、関連する要請を一切処理しないと明記している。対象になるのは公開されているステッカーセット、ボット、チャンネル、グループである。要請は著作権者または権利者に代わって行動する権限のある代理人のみが提出すべきものとされている。
06通知に書く項目
様式はサービスごとに違うが、求められる情報はほぼ共通である。一度揃えれば複数の窓口に使える。
- 連絡先情報。メールアドレス、住所、電話番号のうち一つ以上。
- 著作物の説明。何の作品か、いつどこで配信したかを明確に書く。複数ある場合は代表例のリストを付ける。
- 侵害しているアドレスの特定。ページの URL と、動画・画像の直リンク。
- 侵害箇所の時刻。「0:00-1:13(動画全体)」の形で始まりから終わりまで書く。
- 権利者であること、または権利者に代わって行動する権限があることの表明。
- 通知の内容が正確であることの表明。虚偽の申立ては処分の対象になる。
対象が複数の動画にわたる場合、一通にまとめるとどの URL についての判断なのかが返らないことがある。動画1件につき1通に分けて出すほうが、受付番号も回答も対応がとれる。
07検索から切り離す
転載先が削除されても、検索結果に残ることがある。検索側は別の申請になる。
- Google は、法律に違反している、または権利を侵害していると思われるコンテンツについて法的な理由による削除リクエストを受け付けている。著作権侵害はこの区分である。
- 審査対象は提出した URL のみで、提出していないページは見られない。
- 元のページが削除済みで検索結果の表示だけが残っている場合は、古いコンテンツの更新をリクエストする経路がある。
- Bing についても、Microsoft は著作権侵害について法的に十分な通知を受け取った場合に限りリンクを削除することがあるとしている。
- Google に送った個別の法的通知はLumen に送付されて公開されることがある。
結論は変わらない。検索から消えても、記録はサイトに残る。元のページを消す作業と並行して進める。
08二次拡散の監視
有料コンテンツの転載は、同じファイルが複数のサイトに回る。一件消しても、別のサイトに残っていれば検索から拾われる。
- 転載先に付いていた題名とタグを監視語にする。転載側は同じ文例を使い回すことが多い。
- ファイル名で検索する。配信元のファイル名を変えずに置かれていることがある。
- リンク集に載った場合は、そのリンク集自体を第113条第2項の対象として扱えるか検討する。
- 削除済みの URL も残す。同じファイルが別アドレスに移って戻ってくる。
- 新しい通知には、過去の受付番号を添える。同一案件として扱われ、判断が早くなる。
09流出経路への対応
転載は、どこかから一度持ち出されている。経路が分かれば、同じことが繰り返されるのを止められる。
- 配信時に個別の識別を入れているなら、転載されたファイルからどの購入者の分かを辿れる。
- 識別がない場合は、配信した時期と転載の時期の対応から範囲を絞る。
- 特定の必要があるときは、情プラ法第8条の発信者情報開示命令を申し立てる。要件は第5条の二つである。
- 開示を受けた情報の使い方には制約がある。第7条は、発信者情報をみだりに用いて不当に発信者の名誉または生活の平穏を害する行為をしてはならないと定める。
- 東京地方裁判所民事第9部は、開示命令事件において投稿記事の削除を求めることはできないと明示している。削除は保全命令の申立て等による。
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)が担うのは、権利の所在の整理、転載先の洗い出しと記録、各窓口への通知の下書き、検索結果からの削除申請、再転載の監視という事務の部分である。法律事務は取り扱わず、訴訟代理人にはならない。
10動かないときの手続
任意の通知で動かない相手には、裁判手続に移る。差止めの根拠は著作権法に用意されている。
- 第112条第1項にもとづく差止請求。侵害の停止または予防を求める。
- 保全としては削除仮処分。民事保全法第23条第2項により、著しい損害または急迫の危険を避けるため必要なときに発することができる。権利と保全の必要性は疎明しなければならない(第13条第2項)。
- 海外サイトの場合は、ホスティング事業者とプロキシ事業者の濫用窓口へ進む。Cloudflare はプロキシ・CDN についてコンテンツをホストしていないため削除できないとし、申し立てを運営者とホスティング事業者に転送してオリジンの IP アドレスを提供すると説明している。
- 刑事は第119条の各項による。第123条第2項に当たる場合は告訴が不要になる。
よくある質問
自撮りの写真でも著作権はありますか
撮影したのが自分であれば、その写真について自分が権利を持つ。ただし撮影者が別にいる場合や、配信先の規約で権利の一部を移している場合は請求の主体が変わる。
いくら請求できますか
第114条第3項により、権利の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求できる。有料で配信していた作品なら、配信価格が基準の材料になる。
リンクを貼っただけのサイトも対象ですか
第113条第2項の侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に当たる場合は、侵害行為とみなされる。利用を促す文言の表示や、侵害リンクの数と割合が判断材料になる。
告訴しないと刑事にできませんか
原則は告訴が必要である(第123条第1項)。ただし有償著作物等を原作のまま複製して公衆に譲渡し、または原作のまま公衆送信する一定の場合は、第123条第2項により告訴の規定が適用されない。
Telegramに流れた分は消せますか
公開されているチャンネルやボットなどは dmca@telegram.org への申し立ての対象である。非公開のグループとチャットについては、関連する要請を一切処理しないとされている。
YouTubeで再アップロードを止められますか
YouTube Studio から著作権侵害による削除通知を提出する場合、同じコンテンツのコピーの防止オプションを選択できる。
一通に全部の動画を書いてよいですか
分けたほうがよい。動画1件につき1通に分けると、受付番号と回答の対応がとれ、却下理由も個別に分かる。
海外サイトはどうしますか
ホスティング事業者の濫用窓口へ進む。Cloudflare は著作権と商標について米国の通知と削除の手続に従うとし、プロキシに関する報告は運営者とホスティング事業者に転送すると説明している。
確認した出典
- 著作権法(第112条・第113条・第114条・第119条・第123条) - e-Gov 法令検索
- 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(第5条・第7条・第8条) - e-Gov 法令検索
- 民事保全法(第13条・第23条) - e-Gov 法令検索
- 著作権侵害による削除通知を提出する - YouTube ヘルプ
- 法律に基づく削除リクエスト - Google 法的ヘルプ
- 古いコンテンツの更新をリクエストする - Google 検索ヘルプ
- Bing が検索結果を提供する方法 - Microsoft サポート
- FAQ(著作権侵害の申し立て・非公開チャットの扱い) - Telegram
- 著作権侵害の報告 - TikTok
- 日本向け報告フォーム - X
- Instagram および Threads の削除申出窓口 - Meta
- 濫用への対応方針 - Cloudflare
- 情プラ法第21条に基づき届け出られた削除申出窓口及び削除基準(一覧) - 総務省
- 発信者情報開示命令事件 - 東京地方裁判所民事第9部
本稿は一般的な情報であり、法的助言ではない。結論は個々の事実関係、相手方や裁判所の判断によって変わり、特定の結果を約束するものではない。プラットフォームの方針や法令上の義務は変わるため、記載は掲載日時点で確認した内容である。本文中のサービス名はそれぞれの権利者の商標であり、サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)はこれらと提携関係にない。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は法律事務を取り扱わないため、法的助言が必要な場合は弁護士に依頼すること。
CASE INTAKE
権利の所在が確認できれば、通知は通る
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は、権利の所在の整理、転載先の洗い出しと記録、各窓口への通知の下書き、検索結果からの削除申請、再転載の監視まで一連で扱う。相談内容は外部に出さない。
すべての相談は匿名で行われます。