セクストーションの対処法:最初の数時間でやること・やってはいけないこと
ビデオ通話の録画や送ってしまった画像をネタに、金銭を要求されている。相手はフォロワー一覧や連絡先を示して「拡散する」と迫ってくる。この段階で結果を左右するのは、最初の数時間の行動であり、その大半は相手に返信しないまま進めることができる。
ABSTRACT
警察や各プラットフォームの公表資料から読み取れる方針は一致している。支払わない、やり取りを削除せずに保全する、連絡先やフォロワーの一覧を非公開にする、通報と相談を同時に進める、という順序である。画像がまだ出ていない段階でも、ハッシュ登録によって参加プラットフォームでの投稿を事前に止める手段がある。
2026年10月26日時点で、一次資料のみを確認して作成した。参照したのは警察庁、都道府県警察(愛媛県警察・新潟県警察)、総務省、e-Gov法令検索の条文、Google 検索ヘルプ、X・LINE・Instagram の各公式ヘルプ、StopNCII.org および Take It Down である。
目次
01最初の数時間にすること
要求は、こちらが数分で判断することを前提に組み立てられている。期限を切り、送金方法を指定し、知人の名前を並べるのはそのためである。実際に有効な手当ては、どれも相手への返信を必要としない。
この順番で進める
- 返信をやめる。交渉も分割払いの提案もしない。
- 送金しない。電子マネー、銀行振込、暗号資産のいずれも同じ。
- 追加の画像や動画を送らない。
- やり取りや相手のプロフィールを削除しない。先に保全する。
- 画面全体を撮影して保存したうえで、通報とブロックを行う。
- フォロワー・友だち・連絡先の一覧を非公開に切り替える。
- 最寄りの警察署、または警察相談専用電話 #9110 に相談する。
- 画像が手元にあるなら StopNCII.org(18歳以上)か Take It Down(18歳未満で撮影)にハッシュを登録する。
先にブロックしてしまうと、脅迫の文面と相手のアカウント情報が自分の側から見えなくなることがある。保存を済ませてからブロックする。
02支払いが解決にならない理由
新潟県警察は、セクストーションを「Sex(性的)」と「Extortion(脅迫)」を合わせた造語で性的脅迫を指す語だと説明し、SNSやマッチングアプリで知り合った相手から「ビデオ通話で見せ合おう」と誘われ、送信後に電子マネーでの支払いを求められる流れを示している。
愛媛県警察も、性的な画像や動画を送らせたうえで「お金を払わないと拡散するぞ」と恐喝する手口として注意を呼びかけ、親しい相手であってもこうした画像を送ってはならない、一度他人の手に渡れば自分ではどうしようもできなくなると述べている。
つまり、相手が握っているのは複製可能なファイルである。支払いによって回収できる対象ではない。ここで止めるべきは、送金ではなく拡散経路のほうである。
支払いに応じると、相手の側では「反応する相手」という情報が増える。要求額が上がる、別のアカウントから同じ素材で接触が来る、といった展開も想定しておく必要がある。最初の一回を断る判断が、その後のやり取りの量を決める。
03手口と拡散のしくみ
手口の構成はおおむね共通している。新潟県警察は、犯人が外国人や日本人を名乗る場合があること、「このアプリを入れると動画を見せ合える」と誘って不正アプリをインストールさせ、連絡先データを抜き取られた例があることも挙げている。
| 段階 | 相手の行動 | こちらが守るもの |
|---|---|---|
| 接触 | SNSやマッチングアプリのDMから声をかける | アカウント名とURLの記録 |
| 移動 | 履歴の残りにくいアプリへ誘導する | 電話番号が相手に見える設定 |
| 録画 | 短いビデオ通話を画面録画する | ここから保全を始める |
| アプリ導入 | 不正アプリを入れさせ連絡先を取得する | 端末の権限とインストール履歴 |
| 要求 | 知人の名前を並べて送金期限を切る | 友だち・フォロワーの一覧 |
脅しが成立する前提はひとつで、誰とつながっているかが相手に見えていることである。そこを閉じる作業が、文面への反論よりも先に来る。
04証拠を保全する手順
警察への相談でも、プラットフォームへの通報でも、求められるのは同じ素材である。先にまとめて作っておくほうが早い。
- 相手のプロフィールを撮影する。表示名、ID、アイコン、フォロワー数、プロフィールのURL。
- やり取りを時系列で撮影する。日時が映る範囲を含め、切り取らずに画面全体を残す。
- 指定された送金先(口座、電子マネーの番号、暗号資産のアドレス)と要求金額を記録する。
- 最初の接触、ビデオ通話、要求のそれぞれについて日時とアプリ名を書き出す。
- 送ってしまったファイルは削除せず、他の人が見られない場所に分けて保管する。
画面の一部だけを切り出した画像は、後から加工を疑われる余地を残す。上端の時刻表示から下端まで、画面全体を入れた形で保存しておく。
05連絡先リストを握られたとき
「知人全員に送る」という脅しは、一覧が見えるうちだけ有効である。パスワードの変更よりも、公開範囲の設定を先に片づける。
- フォロワー・フォロー中・友だちの一覧を非公開にする。
- 電話番号やメールアドレスからの友だち追加・検索を無効にする。
- プロフィールの電話番号、勤務先、学校などの欄を削除する。
- 二段階認証を有効にし、ログイン中の端末を確認する。
- 不正アプリを入れた心当たりがあれば、そのアプリを削除し端末の権限を見直す。
一方で、アカウントそのものを削除しない。削除すると自分の側の記録と、何が投稿されたかを確認する手段が同時に失われる。相手の手元のファイルは何も減らない。
06各プラットフォームでの通報
通報は、保全を終えてから行う。LINE のヘルプは、チャットのメッセージを通報する手順の中でブロックするかどうかを選べること、通報したことは相手に知らされないことを明記している。
| サービス | 経路 | 確認した点 |
|---|---|---|
| LINE | 迷惑行為の通報 | 通報は相手に通知されない |
| 投稿またはアカウントの報告 | 投稿単位でもアカウント単位でも可 | |
| X | 私的な画像に関するポリシー | 見返りや金銭を求める投稿も対象 |
| Google 検索 | 個人的なコンテンツの削除 | 検索結果からの削除リクエスト |
X のポリシーは、本人の同意なく撮影または配布された私的な画像や動画の投稿・共有を禁じ、見返りや金銭と引き換えに私的な画像を要求する投稿も禁止対象として挙げている。最初の投稿者と特定されたアカウントは即時かつ永久に凍結されると記載されている。
通報の種類によっては、被写体本人またはその正式な代理人からの申し出が必要になる場合がある、ともXは述べている。本人名義で出すべき申出と、代理で出せる申出を分けて考えておくとよい。
通報は、投稿された一件ごとに出すのが基本である。同じ素材が複数のアカウントや別のサービスに現れた場合、まとめて一通で済ませるとどの投稿に対する申出なのかが特定できず、処理が止まることがある。URLを単位に記録と申出を対応させておく。
07警察への相談と刑法上の扱い
愛媛県警察の資料は、相談先として最寄りの警察署または全国共通の警察相談専用電話 #9110、および警察庁ウェブサイトのオンライン受付窓口を案内している。警察庁の相談窓口のページは、生命に危険が及ぶような緊急を要するものは110番とし、都道府県警察の連絡先の一覧を掲載している。
| 条文 | 行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 刑法第249条(恐喝) | 人を恐喝して財物を交付させる | 10年以下の拘禁刑 |
| 刑法第223条(強要) | 脅迫して義務のないことを行わせる | 3年以下の拘禁刑 |
| 刑法第222条(脅迫) | 名誉や財産に害を加える旨を告知する | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 私事性的画像記録法第3条 | 撮影対象者を特定できる方法で不特定多数に提供 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
送金に応じていなくても、要求そのものが条文に当たり得る点が重要である。また私事性的画像記録法第3条の罪は告訴がなければ公訴を提起できない親告罪とされており、相談の段階で告訴の意向を整理しておく意味がある。
すでに送金してしまった場合でも、送金記録と相手の指定した送金先は資料として残る。追加の支払いを止め、保全した素材をそろえて相談に進む。
08公開された画像の削除導線
実際に投稿された場合は、プロバイダ責任制限法を改めた情報流通プラットフォーム対処法が土台になる。総務省の資料によれば、法律の題名は2024年の改正で現在の名称に改められ、大規模事業者の義務に関するガイドラインは2025年4月1日から施行されている。
同法第20条第1項に基づく大規模特定電気通信役務提供者として、総務省は2025年4月30日付の報道資料で Google LLC(YouTube)、LINEヤフー株式会社(Yahoo!知恵袋、LINEオープンチャット、LINE VOOM など)、Meta Platforms, Inc.(Facebook、Instagram、Threads)、TikTok Pte. Ltd.、X Corp.(X)を指定したことを公表している。2026年8月31日付の報道資料では、ピクシブ株式会社(pixiv)、note株式会社(note)などが追加指定されている。
| 手段 | 根拠・窓口 | 期間の定め |
|---|---|---|
| 送信防止措置の申出 | 情プラ法第22条の公表された申出方法 | 第25条により申出から14日以内に通知 |
| 性的画像としての申出 | 私事性的画像記録法第4条 | 発信者への照会から2日で措置が可能 |
| 一般の権利侵害としての申出 | 情プラ法第3条第2項 | 発信者への照会から7日 |
| 検索結果の削除 | Google の削除リクエスト | 定めなし |
| 投稿者の特定 | 情プラ法第5条の開示請求、第8条の開示命令 | 裁判所の決定による |
2日という短縮は、私事性的画像記録に当たることを示して申出をした場合の特例である。申出の文面で、対象が私事性的画像記録であることと侵害の理由を明示できているかどうかが、この差を分ける。なお検索結果の削除は元の投稿を消すものではないため、投稿先への申出と並行して行う。
大規模事業者には、調査を遅滞なく行う義務(第23条)と、専門的な判断のために侵害情報調査専門員を置く義務(第24条)も課されている。窓口と基準が公表されているかは、総務省のページで確認できる。
09ハッシュ登録で事前に防ぐ
公開される前に動かせる手段はハッシュ登録だけである。端末上で画像からデジタル指紋を作り、その文字列だけを送る仕組みで、画像そのものは外に出ない。
| サービス | 対象 | 仕組み |
|---|---|---|
| StopNCII.org | 撮影時点で18歳以上、かつ現在18歳以上 | 端末上でハッシュを作成し、共有されるのはハッシュのみ |
| Take It Down | 18歳未満のときに撮影された画像・動画 | 画像は端末に残り、NCMECに送るのはハッシュのみ |
StopNCII.org は、パートナーとして Facebook、Instagram、Threads、TikTok、Reddit、X、Microsoft、OnlyFans などを掲載している。利用条件として、本人が写っていること、画像を現在も所持していること、ヌードや性的行為が含まれることを挙げている。
限界も公表されている。Take It Down は、効果が及ぶのは参加プラットフォームの公開型・非暗号化サービスに限られ、すでに投稿された内容については削除に限界がある場合があると明記している。登録は万能ではなく、投稿先ごとの申出と併用するものである。
1018歳未満の場合の扱い
撮影時に18歳未満だった画像は、別の枠組みで扱われる。児童ポルノに当たる場合、提供した者は児童買春・児童ポルノ禁止法第7条第2項により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金とされ、性的好奇心を満たす目的での所持も同条第1項で処罰される。
- ハッシュ登録は Take It Down を使う。基準は現在の年齢ではなく撮影時の年齢である。
- 緊急性があると考えられる場合は110番、それ以外は最寄りの警察署または #9110 に相談する。
- 本人だけで抱えず、保護者や学校に保全済みの記録を渡して一緒に進める。
- 要求に応じて追加の画像を送ることは、相手の手元の素材を増やすだけである。
送ってしまった経緯を本人が責められる筋合いはない。条文が罰しているのは提供・拡散する側であり、対応の優先順位は変わらない。
11その後の監視と再発対応
要求が止まっても、素材が消えたわけではない。新潟県警察も愛媛県警察も、一度拡散すれば削除は極めて難しいと述べている。だからこそ、静かになった後の確認を続ける意味がある。
- 氏名、ID、やり取りで使われた呼び名を定期的に検索する。
- ハッシュ登録は解除せずに残しておく。
- 新しい投稿を見つけたら、まずURLと日時を記録する。
- 通報や相談が継続している間は、保全した記録をまとめて保管しておく。
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は、この順序に沿って、保全、公開範囲の整理、ハッシュ登録、投稿先ごとの申出、その後の継続監視と再申出までを依頼者とともに進めている。弁護士法人ではないため、法律事務の代理は行わない。
よくある質問
もう支払ってしまいました。手遅れですか。
いいえ。送金記録と指定された送金先は資料として残ります。追加の支払いを止め、やり取りを保全したうえで警察に相談してください。
すぐにブロックしてよいですか。
画面全体の保存を先に済ませてください。やり取りと相手のプロフィールを削除せずに残すことが前提です。
連絡先を握られています。アカウントを消すべきですか。
いいえ。一覧を非公開にし、番号やメールからの検索を無効にします。削除すると自分の記録が失われるだけです。
ハッシュ登録で画像がどこかに送られますか。
いいえ。StopNCII.org は端末上でハッシュを作り、共有されるのはハッシュのみだと明記しています。Take It Down も画像は端末に残るとしています。
撮影時は18歳未満ですが、今は成人です。
Take It Down を使います。基準は現在の年齢ではなく、撮影された時点の年齢です。
要求されただけで犯罪になりますか。
財物を交付させた場合は刑法第249条の恐喝、脅迫して義務のないことを行わせた場合は第223条の強要に当たり得ます。該当性は事実関係によります。
削除の申出に期間の定めはありますか。
大規模特定電気通信役務提供者は、情プラ法第25条により申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に結果を通知する必要があります。
一般の削除依頼より早い方法はありますか。
私事性的画像記録に当たることを示して申出をした場合、発信者への照会から2日で措置を講じ得る特例があります。一般の権利侵害では7日です。
確認した出典
- セクストーション - 新潟県警察
- セクストーション注意喚起 - 愛媛県警察
- サイバー事案に関する相談窓口 - 警察庁
- 都道府県警察の連絡先、警察署一覧 - 警察庁
- 刑法 - e-Gov法令検索
- 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 - e-Gov法令検索
- 情報流通プラットフォーム対処法 - e-Gov法令検索
- 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰等に関する法律 - e-Gov法令検索
- インターネット上の違法・有害情報に対する対応 - 総務省
- 情報流通プラットフォーム対処法の施行 - 総務省情報通信白書
- 大規模特定電気通信役務提供者の指定 - 総務省
- 大規模特定電気通信役務提供者の追加指定 - 総務省
- 個人的なコンテンツの削除をリクエストする - Google 検索ヘルプ
- 同意のない私的な画像に関するポリシー - X ヘルプ
- 迷惑行為を通報する - LINE ヘルプセンター
- 投稿やアカウントを報告する - Instagram ヘルプセンター
- StopNCII.org 日本語ページ
- StopNCII.org パートナー一覧
- Take It Down - NCMEC
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。結果は事実関係、対象となる素材、相手方の所在などにより異なり、特定の成果を保証するものではありません。各プラットフォームの方針や通報経路は変更されることがあり、ここに記載した内容は出典に示した日付時点で確認したものです。記載したサービス名・プラットフォーム名は各権利者の商標であり、サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)はこれらと提携関係にありません。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は弁護士法人ではなく、法律事務の取扱いは行いません。
CASE INTAKE
いま要求が続いている場合
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は、アカウントが消える前の証拠保全、公開範囲の整理、ハッシュ登録、投稿先ごとの送信防止措置の申出、その後の継続監視までを依頼者とともに進めています。何が起きたか、いま手元に何が残っているかをお知らせください。
すべての相談は匿名で行われます。