誹謗中傷の削除業者とは|依頼の範囲・法的根拠・費用・選び方
ネット記事や掲示板の書き込みを消したいとき、まず引っかかるのは「業者に頼んで本当に消えるのか」という点である。削除を決めるのはサイト側であり、事業者が扱えるのは探索、根拠をそろえた削除申出、監視という事務の部分である。ここでは日本の法令と各サイトが公表している条件に当てて、依頼できる範囲、動く根拠、費用の見方、契約前の確認項目を一本に整理する。
ABSTRACT
この分野の作業は三つに分かれる。どこに何件あるかを把握する探索、各窓口の条件に合わせて出す削除申出、消えた後の再投稿の監視である。法が期限を課しているのは総務大臣の指定を受けた大規模特定電気通信役務提供者だけで、申出を受けた日から7日以内に判断の結果を通知する義務がある(情プラ法第25条第1項、施行規則第16条)。指定外のサイトには法定の期限がなく、各社が公表する受付条件がそのまま時計になる。請求行為そのものの代行は弁護士法第72条の問題になるため、どの工程を誰の名義で行うかが依頼の可否を決める。
本文の条文・期限・法定刑は、e-Gov 法令検索の原文、総務省が公表する削除申出窓口および削除基準の一覧、情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会の書式、裁判所ウェブサイト、警察庁、および各プラットフォームの公式ヘルプの記載を、掲載日時点で確認したものである。相場の金額、削除までの日数、他社の実績は、一次情報で確認できないため記載しない。
目次
01削除を決めるのは誰か
最初に構造を押さえる。インターネット上の投稿を物理的に消せるのは、その情報を記録しているサイトの運営者か、そのサイトを収容しているホスティング事業者だけである。被害を受けた本人も、依頼を受けた事業者も、弁護士も、自分の手で相手のサーバーから投稿を消すことはできない。できるのは、消すべき理由を示して判断を求めることである。
したがって、この業種の仕事は「削除」ではなく「削除が通る状態を作ること」である。具体的には三つの工程に分かれる。
- 探索。対象が何件、どのサイトにあるかを特定し、URL とスレッド名、レス番号まで落とした一覧を作る。
- 削除申出。各サイトが公表している受付方法に合わせ、侵害された権利と理由を示した申出を出す。
- 監視。削除後の再投稿と、転載先での再出現を継続して確認する。
判断主体がサイト側である以上、結果を約束できる立場の者は存在しない。必ず消せるという説明は、構造を説明していないか、別のことをしている。確認できるのは、申出が受け付けられたこと、回答が来たこと、対象の URL が到達不能になったことの三つだけである。
この三つを検証できる形で残すかどうかが、依頼先を分ける最大の差になる。詳しい検証の手順は削除業者の選び方にまとめている。
02扱う対象の範囲
相談として持ち込まれる内容は、使う根拠と窓口で五つに分かれる。同じ「消したい」でも、通る理由がまったく違う。
| 対象 | 主に使う根拠 | 詳細 |
|---|---|---|
| 流出した画像・動画 | 私事性的画像記録法、著作権法、各社の同意のない性的画像ポリシー | 流出画像・動画の削除手順 |
| ディープフェイク | 各社の加工・合成メディアに関する規定、名誉毀損、肖像の利用 | ディープフェイク削除の実務 |
| 掲示板・口コミの誹謗中傷 | 刑法第230条・第231条、情プラ法の申出、各サイトの削除基準 | 誹謗中傷投稿の削除手順 |
| 個人情報の晒し | 個人情報保護法第35条、各社の個人情報に関する削除方針 | 検索結果からの削除 |
| 企業への風評被害 | 刑法第233条、不正競争防止法、各プラットフォームの口コミ規定 | 企業の風評被害対策 |
切り分けを先に決めるのは、申出の文面を書くためではなく、窓口が違うからである。性的な記録は各社が専用の受付を設けている一方、企業への書き込みは「事実なら消えない」場面が増える。刑法第230条は公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した者を3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金としており、第230条の2は公共の利害に関する事実で目的が専ら公益を図ることにあり真実の証明があったときは罰しないと定める。削除の場面でも、同じ線が引かれる。
法人に向けられた書き込みでは、第233条が使える場面がある。虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損し、または業務を妨害した者は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される。個人の名誉毀損と同じ組み立てでは落ちない代わりに、虚偽性を示せれば別の根拠が立つ。
03SARAZIM LLC の進め方
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は韓国の評判管理会社で、削除申出に必要な事務と監視を扱う。法律事務は取り扱わないため、交渉や裁判手続は弁護士の領域として扱い、工程を分けて提示する。
探索の方法
最初の作業は、件数の確定である。本人が見つけた URL だけを対象にすると、転載先が残ったまま作業が終わる。同社は顔認識を用いた探索を扱い、本人の写真2枚から3枚を基準に、どのサイトに同一の人物が写った記録が出ているかを洗い出す工程を持つ。検索語では到達できない転載先を拾うための工程である。全数把握の考え方は複製の全数把握に分けて書いている。
担当と報告
案件ごとに担当を1名に固定し、受付番号と各サイトからの回答を含む報告を出す。報告に何が載るべきかは、本稿の後半で項目として挙げる。公表している自社の指標は、月平均削除52,142件以上、対応プラットフォーム914個以上、削除率98.2%である。この種の数字は母数と期間、判定方法を確認したうえで読まれるべきものであり、同社の数字も例外ではない。
資料の扱い
監視は撮影物そのものではなく、メタデータとハッシュ値で行う。撮影物は削除し、照合に使う値だけを記録する運用である。利用約款には、作業完了時に個人情報を2週間後に完全破棄する条項を置いている。性的な記録を含む案件では、ここが契約前に確認すべき条項になる。
04情プラ法が課す期限
削除申出が制度として動く根拠は、情報流通プラットフォーム対処法である。プロバイダ責任制限法を改正して名称が変わった法律で、正式名称は特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)である。
この法律は二層構造になっている。第3条は、送信を防止する措置を講じたことで発信者に生じた損害について、サイト側が賠償責任を負わない場合を定める。第3条第2項第2号は、侵害情報等を示して申出があった場合に、サイトが発信者に同意を照会し、照会を受けた日から7日を経過しても不同意の申出がなかったときを挙げる。つまりサイト側には、消しても責任を問われないための手順が用意されている。
第五章は、総務大臣の指定を受けた大規模特定電気通信役務提供者に義務を課す。第22条は申出を行うための方法を定めて公表することを義務づけ、第23条は申出があったときの調査を、第24条は専門的な調査のための侵害情報調査専門員の選任を求める。第25条第1項は、申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に判断の結果を通知することを義務づけ、施行規則第16条がその期間を7日としている。
| 条文 | 内容 | 依頼側の使い方 |
|---|---|---|
| 第22条 | 申出方法を定めて公表する義務 | 公表された窓口以外の経路を前提にした説明を排除できる |
| 第23条 | 申出があったときの調査義務 | 申出が受理された事実を確認する |
| 第25条第1項 | 7日以内に判断の結果を通知 | 回答が来ない場合、申出の有無を疑う材料になる |
| 第25条第2項 | 発信者の意見聴取等の場合は延びる | 延長の通知も書面として報告に載る |
| 第26条 | 公表した基準に従う場合に限り措置を講ずる | 申出の文面を基準の文言に合わせられる |
| 第28条 | 受付状況と対応状況を年1回公表 | 相手サイトの処理件数を督促の根拠にできる |
第28条の公表は、施行規則第18条により毎公表年度経過後2か月以内にインターネットを利用して行われる。相手がどれだけの件数を処理しているかが読めるため、進行が止まったときに持ち出せる数字になる。指定を受けた事業者の一覧と、各社が届け出た削除申出窓口・削除基準は総務省が公表している。
期限が法定されているのは指定事業者だけである。指定外のサイトでは、各社が自ら公表する受付条件と処理の目安がそのまま時計になる。相手ごとに時計の進み方が違うため、「1か月で全件」という一律の説明は、相手の条件を見ていないことを示している。
05刑法と個別法で使える根拠
削除の申出で示す「侵害された権利」は、情プラ法そのものではなく個別の法律から取る。日本で実際に使う条文は、次の範囲に収まる。
| 法律 | 条文の内容 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 刑法第230条 | 公然と事実を摘示して人の名誉を毀損 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 刑法第231条 | 事実を摘示しなくても公然と人を侮辱 | 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料 |
| 刑法第233条 | 虚偽の風説の流布・偽計による信用毀損および業務妨害 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 私事性的画像記録法第3条第1項 | 第三者が撮影対象者を特定できる方法で電気通信回線を通じて不特定または多数の者に提供 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 著作権法第112条 | 著作権等を侵害する者に対する侵害の停止または予防の請求 | 民事の差止請求権 |
| 個人情報保護法第35条 | 本人による保有個人データの利用停止または消去の請求 | 事業者側の是正義務 |
名誉に対する罪は親告罪である(刑法第232条第1項)。告訴は犯人を知った日から6か月を経過するとできない(刑事訴訟法第235条)。削除と刑事告訴は別の手続だが、告訴を考えるなら削除作業と並行して期間を管理する必要がある。
性的な記録には、情プラ法の特例がある。私事性的画像記録法第4条は、撮影対象者から申出があり、サイトが発信者に同意を照会し、照会を受けた日から2日を経過しても不同意の申出がなかったときを挙げる。通常の7日より短い。性的な記録であることを明示して申出を出す意味は、ここにある。
自分が撮影した写真や有料で提供した動画が無断転載された場合は、著作権法を使うほうが早い場面がある。権利の存在を示しやすく、各社の著作権侵害の受付が独立しているためである。考え方は有料コンテンツの流出に分けて書いている。
06削除と検索結果の非表示は別物
相談でもっとも誤解が多いのがここである。検索結果から消えることと、元のページが消えることは、まったく別の結果になる。
| 区分 | 何が起きるか | 残るもの |
|---|---|---|
| 原文の削除 | サイト側が投稿そのものを消す | 第三者の保存した控えや転載先 |
| 検索結果からの非表示 | 検索結果ページに表示されなくなる | 元のページは残り、直接の URL では開ける |
| 古いコンテンツの更新 | 削除済みのページの情報を索引から更新させる | 別の検索サービスの索引 |
Google が扱えるのは検索結果からの非表示であり、ページそのものの削除ではない。だから順序が決まる。先に原文の削除を取りにいき、取れない場合、または時間がかかる場合に、並行して検索結果からの削除を申請する。検索からだけ消して終わりにすると、直接リンクで共有された時点で元に戻る。経路ごとの使い分けはGoogle検索から情報を消す方法にまとめている。
日本には、EU のような一般的な消去請求権を定めた条文はない。最高裁は平成29年1月31日第三小法廷決定で検索結果の削除について判断の枠組みを示し、令和4年6月24日第二小法廷判決は投稿記事の削除請求について判断している。日本で何が認められているかは忘れられる権利は日本にあるかに整理した。
07どの窓口に出すか
窓口は三系統ある。どこに出すかで、必要な書類と時計が変わる。
各プラットフォームの公式フォーム
Google、YouTube、X、Instagram、TikTok、Telegram などは、権利侵害の類型ごとに受付を分けている。性的な画像、なりすまし、著作権、個人情報が別の入口になっていることが多く、入口を間違えると類型違いで却下される。公式フォームは原則として無料で、本人でも出せる。
サイト運営者への直接の申出
掲示板や口コミサイトは、各社が自分の受付方法を公表している。フォーム以外の依頼を受け付けないと明示するサイトもあり、書面のみを受け付けるサイトもある。窓口のないサイトには、ガイドライン等検討協議会が公開している送信防止措置依頼書の書式を使う。国内ポータルごとの違いは国内ポータルの情報を消す手順に分けている。
ホスティング事業者への申出
サイト運営者が応じない、または連絡先が存在しない場合、そのサイトを収容している事業者が次の相手になる。海外の違法サイトではこの経路が中心になり、ドメイン登録事業者やコンテンツ配信事業者の濫用受付を使う。手順は海外の違法サイトへの請求に分けて書いている。
窓口を決める前に確認すること
- そのサイトが総務省の公表した指定事業者の一覧に入っているか。
- 入っている場合、公表されている申出方法と削除基準はどれか。
- 入っていない場合、サイトが公表している受付方法と処理の目安は何か。
- 本人名義で出せるか、代理の場合に求められる書類は何か。
- 対象を特定する単位は URL か、スレッド名とレス番号までか。
08費用は金額より構造で見る
費用について、相場の金額を示す資料は一次情報として存在しない。公表された統計がないため、本稿では金額を書かない。代わりに、見積りの構造を見る方法を示す。同じ金額でも、構造が違えば負担がまったく変わる。
| 費用の項目 | 何に対する対価か | 確認する点 |
|---|---|---|
| 着手金 | 探索と申出の準備 | 削除されなかった場合に返るのか、返らないのか |
| 成功報酬 | 削除の実現 | 何をもって成功とするかが契約書に書かれているか |
| 件数単価 | 対象1件あたりの作業 | 同一ページの複数投稿を1件と数えるか |
| 期間課金 | 監視と再投稿への対応 | 作業期間と無償対応期間が分かれているか |
| 実費 | 書類の取得、郵送、翻訳 | 見積りに含まれるのか、別請求か |
もっとも確認が必要なのは成果の定義である。削除の判断はサイト側が行うため、削除の実現を成果とする契約では、達成できなかった場合の精算方法まで書かれていなければ条項として機能しない。未処理分を件数で割って返す方式か、一定割合を下回った場合に限って返す方式かで、負担の分け方が変わる。
公式フォームへの申出そのものは、ほとんどのサイトで無料である。費用が発生するのは、探索、一覧の作成、各窓口の条件確認、書式の作成、監視という工数に対してであり、削除という結果を買っているわけではない。自力でどこまで進むかの線は削除は自分でできるかに分けて書いている。
削除費用の相場を示す公的な統計は存在しない。「業界の相場は◯◯円」という説明は、出所を確認できない。見積りを比較するなら、金額ではなく対象件数、工程、成果の定義、精算方法の四つを同じ条件に揃えてから並べる。
09相談から監視までの順序
工程の順序は、案件の種類が違っても大きくは変わらない。先に探索を終えないまま申出を始めると、同じ作業を二度行うことになる。
- 相談。対象の種類、分かっている URL、いつから出ているか、本人確認に使える書類を確認する。
- 証拠の固定。削除される前に、画面全体のスクリーンショットと URL、日時を記録する。
- 探索。転載先を含めた全数を洗い出し、サイト別の一覧にする。
- 窓口の確認。各サイトの受付方法、名義の要件、必要書類を一覧に書き込む。
- 申出。類型ごとの入口に、根拠と対象を特定して出す。受付番号を保存する。
- 督促。指定事業者は7日の通知義務を根拠に、指定外は公表された目安を根拠に進行を確認する。
- 再申請。却下された場合、理由を読んで不足を補い、同じ文面を出し直さない。
- 弁護士への移行。任意の申出で動かない相手には、削除仮処分や発信者情報開示命令の申立てを検討する。
- 監視。再投稿と転載の再出現を継続して確認する。
証拠の固定は、省略されやすいのに取り返しがつかない工程である。削除された後では、何がどこに出ていたかを証明できない。画面は切り取らずに全体を記録する。一部を隠した画像は、後の手続で加工を疑われる材料になる。
却下の扱いも分かれ目になる。却下は、同じ文面を出し直しても同じ結果になる。何が足りないと判断されたのかを回答文から読み、対象の特定か根拠の提示かのどちらを補うかを決める。回答文は画像ではなく文字で残す。
10弁護士法第72条が引く線
日本でこの業種を調べる人がもっとも気にする点である。先に条文を置く。
弁護士法第72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解その他の法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることはできないと定める。ただし書は、この法律または他の法律に別段の定めがある場合を除くとしている。第77条第3号は、第72条に違反した者を2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処するとする。
隣接して第73条がある。何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によってその権利の実行をすることを業とすることはできない。示談金の回収まで扱うという説明が問題になるのは、この条文である。
| 説明の文言 | 法的に何に当たり得るか | 確認すること |
|---|---|---|
| 弊社が削除請求を代行します | 法律事務の取扱いに当たり得る | どの名義で、どのサイトに出すのか |
| サイトと交渉します | 交渉は弁護士の領域 | 相手と手段を具体的に聞く |
| 投稿者から示談金を取ります | 権利の実行を業とすることに当たり得る | 第73条の問題を確認する |
| 提携弁護士が対応します | 受任するのは弁護士 | 委任契約の相手が誰になるのか |
| 書式の作成と窓口の確認を支援します | 事務の支援 | 最終的に誰の名義で提出するのか |
この線は、サイト側も見ている。削除請求の代理・代行を業として行うことは非弁行為に当たるとして、そのような請求には一切応じないと明示する掲示板が実在する。つまり、事業者名義で出した申出が、それだけで拒否される窓口がある。名義の設計を抜きにした「全サイト対応」という説明は成り立たない。
問い合わせの段階で一つ聞けば足りる。「最終的に誰の名義で、どのサイトに、どの受付から出すのか」である。ここに具体名が出てこない相手は、工程を設計していない。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は法律事務を取り扱わないため、交渉と裁判手続は弁護士の領域として切り分けて提示する。
11自分でやるか、任せるか
公式フォームは無料で、書式も公開されている。だから「費用をかける意味があるか」は正当な問いである。実務上、自力で止まる場所は決まっている。
| 場面 | 自力 | 依頼する意味 |
|---|---|---|
| 対象が数件で URL が分かっている | 公式フォームで足りる | 小さい |
| 転載先が分からない | 検索語では到達できない | 探索の工程に意味がある |
| 入口の類型選択で却下が続く | 理由が読み取れず同じ申出を繰り返す | 却下理由の読み替えに意味がある |
| 件数が多く期間が長い | 進行管理が続かない | 一覧と督促の管理に意味がある |
| 再投稿が繰り返される | 気づいた時点で拡散している | 監視の工程に意味がある |
| 交渉・特定・訴訟が必要 | できない | 弁護士に依頼する |
本人しか実行できない作業もある。ハッシュ登録の仕組みは本人の端末上で値を生成するため、登録そのものを第三者が代行できない。これを代行すると説明する相手は、仕組みを確認していない。契約前に、本人が行う作業と事業者が行う作業を分けて書き出してもらう。
12任せてはいけない兆候
断る判断は、契約前の数分で決められる。次のいずれかが出たら、その時点で止める。
- 完全削除を保証する。削除の判断主体はサイト側であり、保証できる立場の者はいない。
- 非公開のルートがあると言う。総務省は指定事業者の申出窓口と削除基準を一覧で公表している。誰が出しても同じ窓口に入る。
- サイトの内部に働きかける、情報を取ってくる、といった不正アクセスをうかがわせる説明をする。
- 作業前に全額を先払いさせ、未処理分の精算方法を書面に書かない。
- 受付番号も回答文も出さず、画面が見えなくなったことだけを成果とする。
- 検索結果から消えたことを削除として報告する。元のページは残っている。
- 投稿者を特定して示談にできると説明する。特定は裁判手続で、交渉は弁護士の領域である。
- 急がせる理由を件数の一覧で示せない。
削除できないと言いながら、代わりに自社で用意した記事や投稿で検索結果を押し下げると提案されることがある。これは原文に触れておらず、押し下げが止まれば元の順位に戻る。元のページがどう扱われるのかを、必ず別に確認する。
13契約書で確認する項目
削除は相手方の判断に左右される作業である。だからこそ、何を履行とするかが書かれていない契約は、後から必ず争いになる。
| 条項 | 確認する点 |
|---|---|
| 業務の範囲 | 対象の URL が特定されているか。件数の上限があるか |
| 成果の定義 | 申出の提出までか、削除の実現までか |
| 期間 | 作業期間と無償で対応する期間が分かれているか |
| 未処理分の扱い | 削除されなかった分の精算方法が書かれているか |
| 報告 | 頻度と、受付番号・回答文を含むかどうか |
| 再投稿 | 同一内容の再投稿を対象に含むか |
| 資料の取扱い | 提供した画像・動画の保管期間と廃棄の時期 |
| 再委託 | 第三者に渡るのか、渡る場合の範囲 |
| 名義 | 申出を誰の名義で出すのか |
| 中途解約 | 解約時の精算と、提供資料の返還・廃棄 |
期間の書き方にも差が出る。削除の作業期間と、作業後に無償で対応する期間を分けていない契約は、再投稿が起きた時点で追加費用の話になる。再投稿は性質上必ず起きるため、同一内容の再投稿を対象に含めるかどうかは最初に決める項目である。
資料の廃棄は、口頭の確認では残らない。保管期間と廃棄時期を条項に書き、作業完了後に廃棄を求める通知を書面で出して回答を記録する。性的な記録を含む案件では、ここが最後の作業になる。
14事業者ができないこと
境界をはっきりさせておく。次の三つは、削除の事務を扱う事業者の範囲外である。
発信者の特定
匿名の投稿者を特定するには、情プラ法第5条の要件を満たす発信者情報開示命令の申立て、または開示請求による。権利が侵害されたことが明らかであること、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることの二つが要件である。東京地方裁判所民事第9部は、発信者情報開示命令事件では投稿記事の削除を求めることはできないとし、削除を求めるなら保全命令の申立て等によると説明している。特定と削除を一本の手続で済ませるという説明には根拠がない。手続の中身は匿名の投稿者を特定する手順に分けている。
刑事手続
告訴・被害届は本人または弁護士が行う。相談先は警察庁および都道府県警察のサイバー事案に関する相談窓口である。名誉に対する罪は親告罪で、告訴は犯人を知った日から6か月を経過するとできない(刑事訴訟法第235条)。事業者が代わりに告訴することはできない。
訴訟と交渉
削除仮処分の申立て、損害賠償請求、相手方との交渉は弁護士の領域である。任意の申出を出し切って動かない相手が残った時点で、受任者を切り替えるか、並行して依頼する。事業者ができるのは、そこまでに作った一覧、受付番号、回答文を引き継げる形で渡すことである。
弁護士に移すべき場面
- 各窓口に申出を出し切っても対応が得られないサイトが残っている。
- 投稿者を特定して損害賠償を請求したい。
- 相手方から反論が来て、交渉の状態になっている。
- 刑事告訴を検討しており、告訴期間の管理が必要である。
- 同一の投稿者による継続的な投稿で、差止めが必要である。
15結果は結果報告書で確認する
画面を見て消えていることを確認するだけでは、検証にならない。地域や端末によって表示が違う場合があり、検索結果から消えただけの場合もある。確認は書面で行う。
報告に含まれているべきもの
- 対象 URL の一覧。サイト名、スレッド名、レス番号まで入っているか。
- 申出を出した日付と、サイトが発行した受付番号。
- サイトからの回答文。却下された場合はその理由の原文。
- 削除前と削除後のスクリーンショット。切り取らずに全画面で。
- 未処理として残っている件数と、残っている理由。
- 次に何をするかの予定。再申請か、書式の送付か、裁判手続か。
- 監視の対象範囲と、確認の頻度。
指定事業者に出した案件では、申出から7日以内に判断の通知が来る。したがって1か月後も回答の記載がない報告は、申出自体が出されていない可能性を確認する材料になる。発信者の意見を聴くときや侵害情報調査専門員に調査させるときは、期間内にその旨を知らせて延びる仕組みがある(第25条第2項)。この延長の通知も報告に載るべき書面である。
途中で依頼先を変える場合は、一覧、受付番号、回答文、却下理由、提出した書式の控えを回収してから切り替える。回収せずに乗り換えると、同じ投稿について新しい番号が立ち、サイト側が重複申出として処理を止めることがある。
16相談前に用意するもの
最初の相談で判断に必要なものは決まっている。そろっていれば、工程と期間の見積りがその場で出せる。
相談時に手元にあるとよいもの
- 分かっている URL の一覧。開けるものはすべて。
- 画面全体のスクリーンショット。日時と URL が写っている状態で。
- いつから出ているか、きっかけに思い当たることがあるか。
- 本人確認に使える書類。サイトによって求められる種類が違う。
- 対象が自分で撮影したもの、または権利を持つものかどうか。
- すでに自分で申出を出したサイトと、その回答。
- 勤務先や学校に伝わっているかなど、優先順位を決める事情。
逆に、相談の前にやらないほうがよいこともある。投稿者に直接連絡して削除を求めると、記録が消される、やり取りが別の場所に転載される、要求がエスカレートするといった展開になりやすい。やり取りは削除せずに保全する。初動の判断はセクストーションの対処法に類型別で書いている。
最後に、順序を一つだけ決めておく。証拠の固定を先に済ませてから、削除を動かす。逆にすると、消えた後に何も証明できない状態が残る。
よくある質問
業者に頼めば必ず削除できますか
できない。削除を判断するのはサイト側である。事業者が扱えるのは探索、根拠をそろえた申出、監視という事務で、確認できるのは申出が受け付けられたこと、回答が来たこと、対象の URL が到達不能になったことの三つである。
削除費用の相場はいくらですか
相場を示す公的な統計は存在しないため、金額は示せない。見積りは着手金・成功報酬・件数・期間の構造と、未処理分の精算方法で比較する。公式フォームへの申出自体はほとんどのサイトで無料である。
削除代行は弁護士法違反になりませんか
請求行為そのものの代行は弁護士法第72条の問題になる。違反には第77条第3号により2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められている。誰の名義でどの窓口に出すのかを契約前に確認する。
申出を出したら何日で回答が来ますか
総務大臣の指定を受けた事業者は、申出を受けた日から7日以内に判断の結果を通知する義務がある(情プラ法第25条第1項、施行規則第16条)。指定外のサイトには法定の期限がなく、各社が公表する目安による。
検索結果から消えれば十分ですか
不十分である。Google が扱えるのは検索結果からの非表示で、元のページは残る。直接リンクで共有された時点で元に戻るため、原文の削除を先に取りにいく。
自分で申請したほうが安く済みますか
件数が少なく URL が分かっているなら、公式フォームで足りる。費用が意味を持つのは、転載先の探索、却下理由の読み替え、件数の多い案件の進行管理、再投稿の監視が必要な場合である。
投稿者を特定してもらえますか
できない。特定は情プラ法第5条の要件を満たす発信者情報開示命令の申立てなどによる裁判手続で、弁護士に依頼する。東京地方裁判所民事第9部は、同事件では投稿記事の削除を求めることはできないとしている。
性的な画像の場合、手続は変わりますか
変わる。私事性的画像記録法第4条は、撮影対象者から申出があった場合の発信者への照会について2日を挙げており、通常の7日より短い。性的な記録であることを明示して申出を出す意味がここにある。
提供した画像はいつ消えますか
契約書で保管期間と廃棄時期を定める。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)の約款では、作業完了時に個人情報を2週間後に完全破棄すると定めている。監視は撮影物ではなくメタデータとハッシュ値で行う。
警察には何を相談できますか
警察庁および都道府県警察のサイバー事案に関する相談窓口がある。名誉に対する罪は親告罪で、告訴は犯人を知った日から6か月を経過するとできない(刑事訴訟法第235条)。告訴は本人または弁護士が行う。
確認した出典
- 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(第3条・第5条・第22条から第28条) - e-Gov 法令検索
- 同法施行規則(第16条・第17条・第18条) - e-Gov 法令検索
- 弁護士法(第72条・第73条・第77条) - e-Gov 法令検索
- 刑法(第230条・第230条の2・第231条・第232条・第233条) - e-Gov 法令検索
- 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(第3条・第4条) - e-Gov 法令検索
- 個人情報の保護に関する法律(第35条) - e-Gov 法令検索
- 著作権法(第112条・第113条) - e-Gov 法令検索
- 刑事訴訟法(第235条) - e-Gov 法令検索
- 民事保全法(第13条・第23条) - e-Gov 法令検索
- 届け出られた削除申出窓口及び削除基準(一覧) - 総務省
- インターネット上の違法・有害情報に対する対応 - 総務省
- 情報流通プラットフォーム対処法第20条第1項に基づく指定 - 総務省
- 情報流通プラットフォーム対処法 関連情報サイト - ガイドライン等検討協議会
- 名誉毀損・プライバシー関係書式(送信防止措置依頼書ほか) - ガイドライン等検討協議会
- サイバー事案に関する相談窓口 - 警察庁
- 発信者情報開示命令事件 - 東京地方裁判所民事第9部
- 平成29年1月31日 第三小法廷決定 平成28年(許)第45号 - 裁判所
- 令和4年6月24日 第二小法廷判決 投稿記事削除請求事件 - 裁判所
- Google 検索から個人情報を削除する - Google 検索ヘルプ
- 法律に基づく削除リクエスト - Google 法的ヘルプ
本稿は一般的な情報であり、法的助言ではない。結論は個々の事実関係、相手方や裁判所の判断によって変わり、特定の結果を約束するものではない。プラットフォームの方針や法令上の義務は変わるため、記載は掲載日時点で確認した内容である。本文中のサービス名はそれぞれの権利者の商標であり、サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)はこれらと提携関係にない。サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は法律事務を取り扱わないため、法的助言が必要な場合は弁護士に依頼すること。
CASE INTAKE
どこに何件あるのかを、先に確定する
サラジムカンパニー(SARAZIM LLC)は、顔認識を用いた探索、対象一覧の作成、各窓口の受付条件の確認、書式の下書き、受付番号と回答を含む報告、再投稿の監視という事務の部分を扱う。どの工程を誰が行うかは、契約前に工程単位で提示する。相談内容は外部に出さない。
すべての相談は匿名で行われます。